mixi足あと機能改悪に反対します

この文章は、日本の代表的なSNSであるmixiが、極めて一方的な形でその機能の一つである「足あと」表示機能の「改善」を通告した際に記したものです。元はmixi内の日記でしたが、今回の「改善」に伴って、どれだけ読まれているのかも把握できない状態となりました。よって、mixi内の文章は削除して、こちらに転載、リンクのみを残すこととします。

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6月6日、mixi運営からの重要なお知らせとして、『「足あと」機能改修のお知らせ』という文章が発表されました。

http://mixi.jp/release_info.pl?mode=item&id=1355 (リンク先 mixi

極めて重要な仕様変更でありながら、現在ではトップに表示されるでもなく、リンクを踏まないと辿りつけない場所に隠されているわけですが、撤回を表明するニュースも聞きませんので、予定通り13日にこの改修を実施するつもりなのでしょう。

改修の要点は2点です

○現在の足あと表示がリアルタイムのものでなくなり、翌週初めに1週間分の訪問者をまとめて表示する「先週の訪問者」なるものへと様変わりすること。

○訪問履歴は「友達」(マイミク)と「その他」にわけられて表示。「その他」には友人の友人、mixi同級生、同僚ネットワーク経由の人間しか含まれない(つまり、全く無関係の人間が訪問してきても足あとがつかない)。

mixiの運営の主張はこういうことです。自分の訪問履歴を消去できる「足あと削除機能」が導入されて以降、これの利用は増加の一途を辿り、足あとがもはや閲覧履歴と等価ではない。また、これだけ「足あと削除機能」が利用されているということは、ページの閲覧に足あとが付くという事実が、ページ訪問の心理的障害となり、利用者同士の交流を阻害していることが考えられる。ゆえに、足跡をリアルタイムのものから「先週の訪問者」というものに変えれば、訪問即足あとがつくということがなくなり(たとえ足あとが付く間柄であっても、その削除が確実に実行可能となり)、利用者同士の交流も進むのではないか、と。

しかしながら、こうした主張はたとえ建前であるとしても、全く不当な馬鹿馬鹿しいものであるという他ありません。

利用が進んでいるという「足あとの削除」にしても、月に10件しか行えないことは重要です。よって、削除に及ぶのは、(1.余程ヤバい人間のページを踏んでしまった、2.こいつには今後絡まれたくない、3.元カノ/元彼のページを踏んでややこしいことになるのは勘弁)、といった自覚がある場合に限られるのが実状。通常に利用している大部分の方にとっては、mixiの足あと履歴はほぼ閲覧履歴といって良いかと思います。

また、上記の運営の主張は、訪問に際して「足あとが付くこと」によるストレスのみを挙げていますが、見ず知らずの人間の足あとが付かないこと、によるストレスがあることを(意図的なのか)無視しています。

「足あと」に見ず知らずの名前が載っていたとき、それを、たまたま自分の何かに興味を持ってくれた人、なのか、それとも、ストーカー化しそうなアブナイ人、なのか、と判別する基準はどこにあるのでしょう?公開の日記を書くなど、何らかのアクションを起こせば、大抵は見ず知らずの方の足あとが付くものですが、リアルタイムで足あとが表示されるなら、この訪問者は日記の内容など、自分のアクションに興味を持ってくれた人、と察しがつきます。だが、何のアクションも起こしていないのに、3時間ごとに訪問してくる人を見つけたらどうでしょう?その人はストーカーで、あなたの日々の行動パターンを(ログイン日時から)観察しているのかも知れません。全ては「程度」次第という他ありませんが、リアルタイムでそれをチェックするからこそ、この程度というやつを把握できるのです。

また、私のある友人(mixiにおけるマイミクではない)に、別れ話のもつれからmixiのIDを某巨大掲示板に貼り付けられてしまった方がいらっしゃいました。覚えのない足あとがものすごい勢いでついていたので、何かあると思い検索してみたところ、自分のIDが性的にかなり際どい文言とともに貼り付けてあったそうで。即警察沙汰にしたそう。

足あとがリアルタイムでなく、かつ、友人の友人、会社の同僚、学校の同級生、しか表示されないということになれば、そのような自己防衛も行えなくなり、通常のmixiの利用にも重大なストレスをもたらすことになるでしょう。放射能汚染の問題でわかりましたよね。見えないものに侵食されているかも知れない、という感覚がどれほどのストレスをもたらすか…。今回の改訂では、出身校も会社も意図して設定しておかなければ、(マイミクのマイミクに当たる人間以外の)殆ど全ての参加者のページに、足あとなく訪問出来るということになるのです。ストーカー大喜びですね。運営は、リアルタイムな足あと表示と、削除は月10件までという制限が、mixiの健全な利用を支えてきたことを知るべきです。

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また、mixi運営が「先週の訪問者」として表示される範囲を、マイミク、友人の友人、mixi同級生、同僚ネットワーク経由の人間に限定しようとしている点については、さらに別の疑問もわいてきます。

この仕様だと、子供の友達の親、つまりママ友に当たる人であっても表示されない、ということになります。子供同士は同級生でも、ママ友同士は出身校も違えば会社も違うことが普通。子供の運動会について書いた日記を読んだ方の足あとの中に、たまたま娘の友達のママを見つけて親しい交流が始まる、なんてこともなくなるでしょう。

このことは、mixiが想定するコミュニティ(これはmixiのコミュニティでなく、現実世界のコミュニティのことですが)についてのイメージがあまりにも貧弱なことによるものと考えます。

より大きな問題もあります。私は、この日本において約10万人程度が愛好する音楽について日々文章を書いています。日本には1億を越える人口がありますから、千人に一人が愛好するものを対象にしているといえましょう。千人に一人、というと、今日日少子化で小学校全学年を集めても千人に満たないことが常ですから、近所、学校、勤め先、を探しても、同好の士を見つけるのはなかなか大変、ということになります。

つまり、mixiの考えるコミュニティと、この日本に少数だけど明らかに点在する「同好の士」が作るコミュニティとが、全く一致しないのです。だが、mixiであるライブの感想を公開したならば、1000人に一人の割合で存在する同好の士が、同じライブという接点のみしかもたない人が、自分のページに足あとを残していくかも知れません。そうした方との交流の中で、同じライブを聴いた人たちが他にどういう音楽を聴いているのかを知り、自分の文章に反映させられるかもしれません。小劇場演劇やコンテンポラリーダンスでも同じことが言えましょう。観劇した人間と演技者/表現者には全く接点がないのが普通。ただ、日記を介してリアルタイムで付けられた足あとだけが、両者を結びつける可能性があるのです。事実、私のマイミクには、日記に反応して足あとを付けて頂いたことから、お付き合いが始まった方もいらっしゃいます。

開始当初のmixiに私が期待していたことは、そうした、学校、会社、地域といったものとは全く関わらない形で点在する人たちによるコミュニティを、ネット上に生み出す可能性についてでした。もちろん、mixiにも文字通り「コミュニティ」(以後、「」付きの「コミュニティ」はmixiのコミュニティをあらわします)というものがあり、その点を補ってくれそうな気もします。でも、どうでしょうか?「コミュニティ」経由の足あとすら、「先週の訪問者」として記録することを考えられない今の運営が、そういったコミュニティを育てることに思いを巡らせているとは、とても思えません。それに、mixiに「コミュニティ」がないようなものにも、同好の士はいるはずですし、人は自分が興味をもっているもの全てについて「コミュニティ」に入っているわけではないのです。

というわけで、友達の友達、学校、会社以外のところでの人の結びつきが、充実したコミュニティを作る可能性を信じる立場(あるいはセキュリティ上の極めて重大な問題を心配する立場)ゆえに、今回の足あと機能の改悪(と言い切ります)にはキッパリと反対します。

上記意見に賛同して下さる方は、以下の「コミュニティ」にご参加ください。
http://mixi.jp/view_community.pl?id=5663302