ベルナール・パルメジャーニ(パルメジアーニ)アクースモニウム・ライブ

7月2日は、ベルナール・パルメジャーニ(1927-)のアクースモニウム・ライブに。午後の部、夜の部ともに鑑賞。
1960年にパリのミュジーク・コンクレートの実験グループであるGRMに参加したパルメジャーニ。このGRMには、創設者であるシェフェールをはじめ、リュク・フェラーリ、フランソワ=ベルナール・マーシュ、そして、イアニス・クセナキスという驚くべき偉才が終結していたわけだが、それはあくまでも今日的な視点で見た話であって、当時の楽界においては、中央で大理石の階段を上るブーレーズらに比べれば、あたかも独立愚連隊(@岡本喜八)の如き存在として認識されていたというのが正直なところであろう。
そうした中で、クセナキスの助手(この、一日17時間立ち通しで働く作曲家の助手もまた、極めて苛烈な仕事であったに違いない)などを務める傍ら、作曲家としてのキャリアを積んだパルメジャーニは、デビュー作以降、その作品リストの全てが、テープ音楽(近年のハードディスク上で作られる作品も含む)であるか、テープ音楽にソロか小編成の生楽器演奏を同期させた作品であるという一徹者である。
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ステージと客席の周囲に、色とりどり形もそれぞれな20個以上のスピーカーが並び、これが会場中央の調整卓につながれている、が、音源はステレオ、より具体的に言うならCDである。
しかしながら、会場を満たした音は家庭のオーディオから聴こえる音とは全く異なったもので、会場を取り囲んだスピーカからのサラウンド効果も大きい。どのように高級な再生装置を使っても、2本のスピーカーを使うのみでは、このような音場を作り出すことは出来ないだろう。
この秘密は、ステージ上に、それぞれ異なった特性を持つスピーカーを、その特性に合わせて配置しているところにある。
例えば、音離れの良いスピーカーとそうでないスピーカーで同じ音源を鳴らすとする。すると、音離れの良いスピーカーだけが、指向性の強い音(たとえば、何かがはじけるような音)を、それこそ聴き手を刺すような音質で再生することになる(音離れの良くないスピーカーでは、そうした音も他の音と混合されて再生されてしまうので、ここに一つの差異が生まれる)。
つまり、ここで音離れの良いスピーカーの音量だけを上げてやれば、既成の音声情報の中から指向性の強い音だけを取り出してみることが出来るわけだ。
このような作業を、スピーカー毎の微妙な差異を上手く利用して続けていけば、ステレオ音声の中に埋没した音響情報を多層化し、それらにあたかも独立なチャンネルを与えるかの如く取り扱うことが可能になる。結果、指向性の弱い低音が会場を包み込むように鳴る中で、ステージ上最前列のスピーカーからは小枝が燃えるかのような音が強調され鳴り響く、という魔術が実現するのである。 しかしながら、そのためには楽曲に使われている音を完全に把握/記憶し、さらにはそれを的確に操作する手腕が必要となるのは言うまでもない。