そういえば、ユリイカの坂本龍一特集に

ユリイカ4月号増刊 総特集坂本龍一 にサントラの批評を5枚分だけ書いたという話は以前に書いた。ちょうど私の手元に「ハイヒール」「リトル・ブッダ」「御法度」「星になった少年」「シルク」の5枚がありますよ(実は、「ハイヒール」と「リトル・ブッダ」の2枚は弟のものだ)、と岸野雄一さんにお伝えしたら、「じゃあ、それ書いて」ということで決まったのだったが。

この5枚の中では「御法度」が群を抜いて優れたアルバムだと思うが、このアルバムは新作「out of noise」を先取りしたかのような音響的なトラックが多く、万人に薦められるものでもない。私はというと、このアルバムを聞き、映画を繰り返し観るにつれて、大島渚という監督の映画音楽へのこだわりや要求がどのようなものだったのか知りたく思ったのだが、そのことを教えてくれる資料は手元になかった。

だが、今日、武満徹が音楽を担当した大島渚の「愛の亡霊」のサントラアルバムをたまたま入手したら、そのものズバリの言葉が載っていたので驚いた。これを入手したのが1ヶ月早ければ・・。というわけで、ユリイカのサントラ批評を読まれた方への参考として、該当部分をここに引用しておく。

自分には音楽はわからないと考えている私は、映画における音楽の仕事をまったく作曲家にまかせきりである。作曲家の才能にたよるだけである。というより、作曲家の人格にたよるだけである。といったほうがいい。そして、あとは祈るだけである。−大島渚

音楽については、監督が音楽家を信用していろいろとアイディアを出させた方が(音楽家に才能があれば、の話であるが)上手くいくことが多い。その最たるものが、溝口健二(監督)と早坂文雄(音楽)による「雨月物語」と「近松物語」の二本であり、小林正樹(監督)と武満徹(音楽)による「切腹」と「怪談」の二本であろう。対して、音楽について事細かな指示を出したという黒澤明の仕事は、音楽演出に関してはそう目覚しい効果を挙げていないようにみえる。黒澤の指示によって「羅生門」に「ボレロ」そっくりの音楽をつけざるを得なかった早坂文雄の苦境は、50年後の坂本のそれを予見してもいる。


御法度?GOHATTO?

御法度?GOHATTO?

  • アーティスト: サントラ,坂本龍一,Masayuki Okamoto,Keiko Narita,Izumi Iijima,Atsushi Ichinohe,Tamami Touno
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1999/12/10
  • メディア: CD
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これが既に廃盤になっているのは惜しい。新譜との関連でいうならば、最も重要なアルバムの一つであろうに。

out of noise(数量限定生産)

out of noise(数量限定生産)

これが新譜。