山根孝司クラリネット・リサイタル

12日 17:00
トーキョーワンダーサイト渋谷
Thomas Tallis (1505-1585) <>
Enrique Raxach (1932- ) <>
田村文生 (1968- ) <<歌の環 Liederkreis>>
Antoine Prawreman (?) <>
Jonathan Harvey (1939- ) <>
Karel Goeyvaerts (1923-1993) <>
Steve Reich (1936-) <>
Thomas Tallis (1505-1585) <>
Encore
Michael Smetanin(1958- ) <>

長くベルギーのIctus Ensembleにて活躍し、帰国後はNHK交響楽団に所属。なにわ《オーケストラル》ウィンズに皆勤する等、吹奏楽畑での活動も知られる山根孝司が、クラリネット・ソロ+自身が録音した多重録音音源のみによるリサイタルを行うという。
山根といえば、2004年2005年と相次いで行われたアペルギスの個展にて(2005年の個展の模様はこちら)、楽譜を極力尊重した見事な演奏を聴かせていたことが印象に残っていたので、渋谷まで出かけてみた次第。
会場にはステージ上に一組、会場後方に一組スピーカーが設置され、多重録音音源部分の再生はサラウンドで行われていた。楽譜には音源の位置についての指定があるわけではないので、これらの配置についてはリハを重ねる中で決定していったとのこと。設置されたスピーカーの質も高く、現代音楽演奏の現場で、しょぼいモニタースピーカーの音を聴かされてガッカリすることも少なくないゆえ好印象。音色勝負のクラシック/現代音楽のライブでは、その辺りにも大いに拘るべきだろう。
演奏された9曲の中では、田村文生とライヒをとりわけ興味深く聴いた。田村の作品は、TEMPUS NOVUMの自主制作CDに入っているのと同じもので、クラリネット24本分の音を重ねているにも関わらず、響きに透明度があるのが魅力(ポスト・ストラヴィンスキー路線でドカドカ鳴らす吹奏楽曲などとは、かなり違った趣)。今回、多重録音音源を聴衆の周囲に分散して鳴らしたことで、響きの分解能がさらに上がり、さらに高い透明度が実現していた点が特筆される。
ライヒは、演奏者としての基礎体力が剥き出しになってしまう体育会系の楽曲(ライヒのアンサンブルが来日した際、さいたま芸劇のリハ室を連日朝から晩まで借り切って、世界中で何度となく演奏した楽曲を、繰り返し繰り返し練習していた、と聞いた)よくここまで仕上げたと敬服。 良い演奏会であった。