そら飛ぶ庭関連 戸下神楽 ナンカロウ 雪村いづみ

 2年ほど前から「そら飛ぶ庭」という情報サイトに寄稿を続けていて、現在までで21本ほどの原稿を寄稿したことになる。かつては、「嵐山光三郎団長ひきいる人生黄金期の情報サイト」という惹句がトップページに踊っていたため、内容の選択が過度にマニアックにならないように気をつけていたのだけど、そうなると、それはそれで取材に相当の時間が必要ということになる。というわけで、私個人が忙しかった昨年の秋から今年にかけては、かなり現代音楽に近い内容が並ぶことになってしまった。今回、書いた原稿にいろいろと手を入れたので、ここでご紹介してみる次第。

第16回 戸下神楽 切り捨てられゆく地方で文化を守るということ

 昨年度の<東京の夏>音楽祭に上演された、宮崎県東臼杵郡諸塚村の戸下神楽についての批評。家業である神社の宮司をつとめる立場としては、本当に書きづらかったものなのだけど、読んで泣いたという人も二三あるというから、今になってみると書いてよかったのだとも思ったり。私が批評に期することを、かなり直接的に記載したりも。

第17回 いにしえの自動演奏機械がポリリズムで踊る コンロン・ナンカロウの仕事

 むかし、管打合奏MMというメールマガジンの執筆陣に名を連ねていて、これは吹奏楽を含む管打合奏の魅力について、いわゆる学校吹奏楽やコンクールといった視点とは全く異なったところから光を当てようという、かなり意欲的なものだったのだけど、執筆メンバーが、ミュージック・マガジンの編集者である斉木小太郎、ジプシー音楽についての著書で知られる関口義人(氏はCCBの元ギタリスト:関口誠人の実兄でもある)、今ではNHK-FM:「吹奏楽の響き」のパーソナリティもつとめている作曲家:中橋愛生、といった人たちであったから、誰も彼もとにかく忙しく、結局3回くらい発行したところで休刊してしまった。

 で、このMMの音盤合評のコーナーで、私がお題として出したのがアンサンブル・モデルンが演奏するナンカロウの「プレーヤー・ピアノのためのスタディ」(ミカショフによる室内管弦楽編曲版)だった。

Nancarrow;Studies

Nancarrow;Studies

 ちょうど、菊地成孔率いるDCPRG(デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン)が、ポリリズム的な楽曲の数々でクラブシーンを席捲していた頃だから、管楽合奏とポリリズムとの関連を考える上で有益かと思い、この音盤から二曲を合評会へと提案してみたというわけ(室内管弦楽団のための編曲だが、弦楽器はあまり目立たない)。これらの楽曲に対する執筆メンバーの反応が素晴らしく良かったので、それ以来、ジャンルを超えて聴かれるべき現代音楽といえば、まずコンロン・ナンカロウの諸作品をあげるべき、と主張するようになった。最近、ナンカロウには素晴らしいリリースが幾つかあったので、ならば今こそ、と思って書いてみたのがこれ。

Player Piano 1

Player Piano 1

やはり、ジャズの影響が明確に感じ取れる、初期作品から聴いていくのがお勧め。

Studies for Player Piano 7

Studies for Player Piano 7

いきなり最高到達点から行くというのも良いだろうけど。

ミュージカル・フロム・カオス

ミュージカル・フロム・カオス

DCPRGはこの辺がお勧めかも。

第18回 高度成長の女 雪村いづみとその時代 

 岡本喜八の、特にDVD化もされていないような初期作品を好む私のような人間からすると、やはり雪村いづみは歌手というより得がたい女優、ということになるわけで、平凡社新書から出た「雪村いづみ物語」(大下英治)は発売とほぼ同時に手に入れて読了したが、これはもともとカラオケの専門誌に連載されてものゆえ、俳優としての雪村についての記述が薄めなのを残念に思っていた(それでも、雪村ほどの芸能人が、「こんなことまで!?」と思うようなところまでぶっちゃけているので、これはこれで得がたい本ではあるのだけど)。

雪村いづみ物語 (平凡社新書)

雪村いづみ物語 (平凡社新書)

 おりしも、雪村いづみが主演した「君も出世ができる」(須川栄三1964)がDVD化されたので、それを機に何かを書いてみようと思ったもの。ちょうどこの頃、黛敏郎についていろいろ考えていたので、彼が音楽を担当した(これは劇中歌の作詞を谷川俊太郎が担当した、東宝肝いりの本格ミュージカル映画だった)この映画について書いたみたという次第。

君も出世ができる [DVD]

君も出世ができる [DVD]

このミュージカルの最重要ナンバー「アメリカでは」を、雪村いづみ自身をゲストに招いてカヴァーしたのがピチカート・ファイヴだった。片山杜秀氏は武満徹のポピュラーソングと違って黛敏郎のポピュラーソングがカヴァーされないことを嘆いていたけど、この1曲で石川セリの武満カヴァー10曲分くらいの価値はあるじゃない。