湯浅譲二バースデーコンサート

湯浅譲二氏と初めてお話しをしたのは、東京オペラシティでの音楽祭:コンポージアムにリゲティが来なかった際、グロボカールの公開レッスンがあった時のことだから、もう11年も前のことになる。当時、私は将来自分が音楽評論を書くなんてことを想像だにしていなかった院生(それも物理学の)だったので、一ファンとして声をかけさせて頂いたのだった。

10年前の8月12日には湯浅氏の70歳を記念するコンサートがあって、このときは傑作:ホワイトノイズによる「イコン」の4チャンネル版(「イコン」は本来、五角形に並んだ5つのスピーカーによる作品で、ゆえに4チャンネル版はリダクション版ということになる)が演奏されるというので、これは聴き逃せないと出かけたのだ。この日のことは今でも昨日のことのように思い出すことが出来る。というのも、この日の朝、研究室に出かけようとしていた際、出身中学校吹奏楽部OBの先輩から慌てた声で電話が入って、「今日、中学校の吹奏楽部のコたちのコンクール本番で、今、府中の森芸術劇場のホールにいるんだけど、自由曲で使うタムタムを学校に忘れてきてしまったの。他の学校に借りられない特殊な楽器だし、あと40分で本番が始まるので、悪いけど、至急学校に行ってタムタム受け取って府中まで来て!」と、かなり無体な注文を受けた。というわけで、湯浅氏が70歳になる日に、私は真夏の太陽が照りつける中、タムタムを小脇に抱えて、府中の森の北端の駐車場からホールを目指して全速力で走っていたのだ。そうそう、このコンクールメンバーには、当時中1で、今、タレントとして活躍している岩佐真悠子もいたのだったか。

で、それから10年。 ひょんなことから(というのは、mixiでの私の日記に端を発してもいるので)、湯浅譲二氏の80歳の誕生日を祝う演奏会で、今度はいろいろとお手伝いをさせて頂くことになった。私が行ったのは、主にチラシの制作(の手伝い)と発注。チラシの素材とする著作権フリーの写真が手元になかったため、前日に管弦楽曲(7月12日に福山で初演された、交響組曲「秋風の芭蕉」)を完成させたばかりの湯浅氏を訪ね、写真を撮影させて頂いたりも。

グラフをチェックする湯浅氏。

ちなみに、湯浅氏の作品の多くは方眼紙上のグラフとして作曲され、演奏者にはこれを5線譜に「翻訳」したものが渡される。このことは、湯浅譲二という作曲家が、電子音楽の作曲からいかに多くの方法論を掴み取ってきたのかを良く物語る。日本の電子音楽の中で、湯浅譲二がいかに巨大な業績を残しているのかについては、「日本の電子音楽 増補改訂版」(川崎弘二 編著:愛育社)に収録された拙稿をお読みいただきたい。11日の<東京の夏>音楽祭での日本の電子音楽を集めたコンサート(坂本龍一:選曲)でも、3曲が選ばれて演奏されていた。

で、出来たチラシがこちら。


電子音楽的作曲家:湯浅譲二の独奏/独唱曲をまとめて聴ける得がたい機会。一人でも多くの方にご来場いただければと思う。私は当日は一聴衆として(もう前売り券も注文済み)と会場内にいるはず。

8月12日 19:00 開演(18:30 開場) 東京オペラシティリサイタルホール

料金
当日3500円
前売り(一般)3000円
前売り(学生)1000円
学生料金は前売りのみ取り扱い

主催
アンサンブル秋吉台 ensembleakiyoshidai@gmail.com

問い合わせ
東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999

曲目/演奏者

マイ・ブルー・スカイ第3番 My Blue Sky, No.3 (1977)
ジョージ・ヴァン・ダム(vn)

クラリネット・ソリテュード Clarinet Solitude (1980)(バス・クラリネット版)
山根孝司(cl)

タームズ・オヴ・テンポラル・ディーテイリング Terms of Temporal Detailing (1989) (アルト・フルート版)
大久保彩子(fl)

ヴィオラ・ローカス  Viola Locus (1995)
佐藤佳子(va)

メロディーズ Melodies (1997)
藤田朗子(pf)

テナー・レコーダーのためのプロジェクション Projection for tenor recorder (2004)
鈴木俊哉(rec)

R.D.レインからの二篇(2005)
「私は夢をみた」 I saw a dream
「愛は似る。降りくる雪の…」 Love is like the falling snow
松平敬(vo)

ぶらぶらテューバ Rambling Tuba (2006)
橋本晋哉(tub)

箏歌「蕪村五句」 Koto Uta “ Five Haiku from Buson” (2008)
吉村七重(koto)

日本の電子音楽

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