刃傷紙風船という洒落は・・・(以下略)

Always 三丁目の夕日』は『雨月物語』をやっていたんだと突然気がつきました。
こんなふやけたことを、こともあろうに溝口シンポジウムのパネラーとして発言していた山崎貴氏に腹を立てていたのは確かなわけだし、荒船山で滑落死した臼井儀人氏を悼む気持ちもあるわけなので、『BALLAD 名もなき恋のうた』(2009)を観にいくくらいなら、最寄のTSUTAYAにでも行って『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2002)を借りてきなよ、と思う今日この頃である。
よく考えてみれば、『Always 三丁目の夕日』(2005)も、西岸良平の漫画:『三丁目の夕日』の映画化というよりは、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001)のパクりといった方が座りが良い映画なわけで、映画の肝となるビジュアルがどれだけアニメからパクられているかも検証せずに、あれを「国民映画」などと評していた方々には、即刻、映画批評から足を洗っていただきたいもの。単なるノスタルジーへの退行ではなく、「進むべき道はない、だが進まなくてはならない」とでも言うような、未来を生きる意思を不器用に表明した「クレヨンしんちゃん」の方が、映画としても深遠なテーマを持つことは疑いないわけだし。
そんなことを考えているうちに、フィルムセンターで開催中の山中貞雄の生誕100年特集が半分終わってしまった(しかし、前半と後半で同じものを1度ずつ上映するから、まだコンプリートするチャンスはある)。24本の監督作がありながら、満足な形で見られるのは3本のみ。28歳で戦病死した天才の業績に触れて、希望なき明日を生きる胆力をつけましょう。それに、映画における音響の演出については、現代の映画人は山中にこそ学ぶべきところがかなりあるはず(この点については、過去にこんな文章を書いた。繋がってないカットを濁流のような音楽に乗せることで、どうにか繋がっているように錯覚させる、へたくそな映画はもうコリゴリということで。

クレヨンしんちゃん」の映画というと、この2本に加えて『ブタのヒヅメ』『ヘンダーランド』はとりあえず観ておきたい。『戦国大合戦』の合戦シーンが、なまじの実写映画より丁寧に考証されたものであることは良く知られるところだが、主人公があくまでしんちゃんであることで、戦国の2人の恋愛関係が最近のテレビドラマめいたベタベタしたものになることを巧妙に避けているのも特筆されるところ。

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繋がらないカットを音楽でごまかしている映画というと、この辺りが筆頭かと。ヘタクソなだけでなく無駄に長いんだよ。